平均律から脱却しよう(1)

平均律とは、1オクターブを12の半音に均等に分ける調律法で、19世紀後半からポピュラーになってきたものです。これによって、24の調どれで弾いても同じ響きが得られるようになり、転調も自由になりましたが、反面、どの和音をとっても音が濁っていてキタナイという状況が生まれました。どのくらい汚いかをまず初音ミク演奏で体験してみましょう。それぞれ最初の1分で良いです。

そしてもう一度:

え?!ってなりませんか?平均律キタナイ。とても聞く気にならない。

でもあなたは言うかもしれません。「だって、バッハは平均律のために書いたんでしょ?平均律クラヴィーア曲集というくらいだし。」

ぶーっ。不正解。バッハは「平均律クラヴィーア曲集」なんてものは書いていません。これは誤訳なんです。元のタイトルは

  • Das Wohltemperierte Klavier (The Well-tempered Keyboard / 良音律鍵盤楽器) 曲集

です。そして、この「良音律」は「平均律」ではありません。彼が不均等音律を使っていたことは疑いないことのようです1

このKirnbergerは、バッハの死後19世紀にポピュラーになった音律で、ベートベンやショパンはこの音律で書いているようです。その辺はまたおいおい書こうと思います。

なお、こう言う音律は、自由にピッチを変えられないピアノやオルガンのための妥協です。ピアノやオルガンのような楽器が入らないオーケストラや合唱では自由にピッチを変えることができるので、純正律2で演奏することができます。これは、上記の不均等音律に比べてさらに和声の響きが美しくなります。その例を一つ以下にあげます。ロシア正教会の賛美歌をチャイコフスキーが編曲したものです。ロシア正教会の音楽では楽器を使うことが許されません。なので、ア・カペラ(=教会風のという意味ですね…)の合唱になります。純正律の透き通った響きに浸ってください。

 

脚注

  1. もっとも、上記のKirnbergerでは無いようですが…。なお、実際のバッハの調律法は、Das Wohltemperierte Klavier の表紙に書いてあるという説があります。論文はこちら→ Bradley Lehman: Das Wohltemperierte Klavier http://nymetro-ems.com/images/pdf_music/Bach%27sExtraordinaryTemperament-PartI.pdf
  2. 純正律は、自然倍音列をもとに作られた音律で、そのために和声の響きが心地よい。一方旋律的にはピタゴラス音律の方が美しいと感じられることが多いが、教会音楽のように残響が多いところでは、単旋律でも和声の効果が出てしまうため、純正律を使うメリットが高い。こう考えると、残響があまり長くないところでは、主旋律をピタゴラス音律で弾いて、その上に純正律で和声を載せるのが良いような気がする。というか、弦楽四重奏とか、普通にそうしていると思う…。耳で合わせるって、そういうことですよね。

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