2012年5月17日、OpenIDファウンデーション・ジャパンのStudent Identity Trust Framework WGの成果発表会として『「信頼フレームワーク」セミナー vol.2 〜学生IDを活用しオンライン学割サービスを提供しよう~ 』が、 国立情報学研究所 中村素典教授とOpenIDファウンデーション・ジャパン 山中進吾氏をスピーカとして行われました。
現代のデジタル社会において、信頼を基軸とした学生 ID 管理の仕組みがますます重要性を高めています。本記事では、このセミナーで紹介された学生向けトラストフレームワーク(SITF: Student Identity Trust Framework)の概要とその意義、国際的な潮流、そして将来の可能性について紹介します。
トラストフレームワークとは?
学生 ID を活用してオンラインで学割サービスを提供する目的を持つこのフレームワークは、学生の属性情報の安全な流通を目指しています。SITF は以下のような関係者で構成されます。
- ポリシー策定者
- トラストフレームワークプロバイダー
- アイデンティティプロバイダー
- 依存先
- 認定監査人
- 一般利用者
これにより、教育機関と企業間のつながりを深め、安心して利用できる学生向けサービスの提供を実現します。

国際的な潮流と動向
トラストフレームワークはすでに国際的に注目されており、さまざまな取り組みが進行中です。
- アメリカ: Open Identity for Open Government や NSTIC などを通じた政府と民間の連携が進展。
- 官:Open Identity for Open Government
- GSA(一般調達局)配下のFICAM(国民ID局)
- 民:National Strategy for Trusted Identities in Cyberspace (NSTIC)
▪商務省、NIST - 学:InCommon
- 官:Open Identity for Open Government
- 他国: カナダ、オランダ、オーストリアなどで国民 ID システムの導入検討。
- ダボス会議:“Re-thinking Parsonal Data” プロジェクト
- 国際標準化: ISO や ITU-T による標準化の議論が進行中。
- 日本
- NII 学認
これらの取り組みにより、トラストフレームワークの国際的な普及が期待されています。
Sudent Identity Trust Framework (SITF) の実例と未来
こうした中で注目されるのが学生ID向けトラストフレームワーク(SITF)です。
ここでは、
- オンライン学生証明が発行され
- 受領機関は、大学発行の署名付き属性情報の利用が可能になり、
- 学割サービスの提供が可能になる
などのユースケースが想定されています。
これにより、新たな教育・サービスビジネスの創出が可能となります。学割でソフトウェアが買えたり、切符が買えたりですね。

学生 ID 管理の安全性と信頼性
学生の属性情報の流通が最適な形で管理されることで、信頼性も高まります。
- 属性情報の流通方法: 大学による署名付き属性情報の管理
- 信頼性チェック: 「学認」が個人情報の保護と利用者の権利確保を担当
- 産学連携: 大学と企業の連携強化による教育・研究環境の改善
未来への展望
SITF の導入により、優れた学生サービスの提供が可能となり、インターネットの信頼性向上にも寄与します。さらに、教育とビジネスを結びつけたイノベーションのプラットフォーム創出が期待されます。
オンライン学割などのサービスが現実のものとなる日も近いでしょう。これが新たな産学連携の形となることは間違いありません。
SITF は単なる技術革新ではなく、未来の学びと社会をつなぐ重要な基盤なのです。OpenIDファウンデーション・ジャパンでは、Student Identity Trust Framework WGをつくってこうしたことの検討をしています。今後の動向に注目していきましょう。
Student Identity Trust Framework WGについて
トラストフレームワーク・ワーキング・グループの下部に設置した、国立情報学研究所(NII)との共同ワーキング・グループです。 学術分野と民間ビジネス分野を繋ぐトラストフレームワークを構築し、学生であるという属性をオンラインで取り扱うことにより、 学生証を提示するという行為をネットの世界でも可能にします。 ユースケースとしては、デジタル新聞、電子書籍、ソフトウェア、旅行チケットに際しての学割の利用や、クレジットカード契約などを想定しています。
主な活動
- 属性情報を保証するためのポリシーの公表
- SITFを使った実サービスの検討 (パイロットサービス参加者を募集)