Caro mio ben の成立背景
『Caro mio ben(カーロ・ミオ・ベン)』は、18世紀のイタリア歌曲(アリエッタ)で、邦訳では「いとしい女(ひと)よ」という意味になります。作曲者は主にトンマーゾ・ジョルダーニ(Tommaso Giordani, 1730–1806)とされますが、長らくジュゼッペ・ジョルダーニと混同されてきた経緯があります。ふたりとも当時ロンドンに住んでいた音楽家です。1782年以前に作曲され、イギリス・ロンドンで出版されたとされています。
内容は、「愛しい人よ、どうか私を信じてほしい。あなたがいなければ私の心は弱ってしまう」という、愛する人への切実な思いと嘆きを歌っています。まぁ、振られた人が相手の心を取り戻したい、そういう歌ですね。原曲は独唱と弦楽四重奏のために書かれ、現在はピアノ伴奏などでも多く演奏されています。もともとは男性が女性に対して歌う曲のようですが、現代では男性でも女性でもどちらでも歌います。
この曲は日本でも長らく親しまれ、中高の音楽教材や声楽の基礎曲として多くの人に歌われてきましたようです。歌詞はシンプルで覚えやすく、イタリア古典歌曲の代表的な一曲となっています。YouTubeで歌い方のビデオなども出ていますね。
歌詞の内容からもわかるように、意中の相手への愛や離別の苦悩、信頼を願う気持ちが率直に込められており、恋愛歌の典型例ともいえる作品です
Caro mio ben の歌詞
Caro mio ben の歌詞はこんな感じ(表1)です。
イタリア語の歌詞 | 日本語訳 |
---|---|
Caro mio ben, | いとしいいとしいあなたよ、 |
credimi almen, | 少なくとも信じておくれ、 |
senza di te languisce il cor. | あなたなしではこの心は衰えてしまうのです。 |
Il tuo fedel | あなたに誠実なこの私の心は、 |
sospira ognor. | いつもため息をついています。 |
Cessa, crudel, | もうやめてください、冷たい人よ、 |
tanto rigor! | そんなにもつれない態度は。 |
おすすめの演奏
Cecilia Bartoli
わたしのおすすめは、メゾソプラノですが、Cecilia Bartoli (図1)です。最初から「いとしいあなたに」「信じておくれ」とすがっていますよね。最後のCaro mio ben, の pp の美しいこと…。
Sumi Jo
ソプラノだと、Sumi Jo さんの良い録音(図2)があります。こちらもお楽しみください。
Luciano Pavalotti
上に書いたように、Caro mio ben は本来男性から女性に向けてうたう歌です。というわけで、ルチアーノ・パヴァロッティの名演をご紹介しておきます(図3)。ピアノ伴奏で映像もついているのが300万再生なのに対して、Luchiano Pavalotti オフィシャルチャンネル版のオケ伴奏のこれが4万4千再生というのは納得がいかないので、こちらを載せておきます。
町田ちま
また、VTuberの町田ちまさんも歌われています(図4)です。声楽は習ったことがないようですが、かなり高い音程のソプラノリリコで歌っておられます。天使的で心が洗われますね。切り抜きなども入れると再生回数も600万回とか行っていてすごいですね。クラシックに普段馴染みのない方々にもこうして触れていただくとのはとても良いことだと思います。
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