OpenID Foundation の理事選挙に立候補しました

今朝方、米国OpenID Foundationの理事選挙に立候補いたしました。立候補に伴う所信表明は選挙サイトにあるものが正式なものとなりますが、英文ですので、概要の日本語版をこちらにおいておきます。

Nat Sakimura

わたしはデジタル・アイデンティティとプライバシーについて、過去20年に渡り関わってきました。そのメイン・テーマは常に「Power to the People」- ひとびとに自らの情報のコントロールができる力を デジタル・アイデンティティを使ってあたえるということでした。 わたしは現在野村総合研究所の上席研究員ですが、2008年にはOpenIDファウンデーション・ジャパンを設立、2011年からはOpenID Foundation (グローバル)の理事長も努めています。また、Open Identity Exchange (OIX)、カンターラ・イニシアチブの設立にも関わっています。他方では、各種政府委員をつとめ、ISO/IEC SC 27/WG 5 アイデンティティ管理とプライバシー技術小委員会の日本代表も努めています。IETF OAuth および JOSE ワーキンググループでも規格作成に関わってきました。本拠地は東京です。

わたしのOpenID Foundation での実績をいくつかかいつまむと、以下のようになります。

  • AB/Connect WGを設立。OpenID Connect Core 1.0 と関連仕様を作成
  • JSONに対する署名と暗号化の規格化を開始。これは後にJWS, JWE, JWTなどになりました。
  • FAPI WGを開始し、発行した開発者素案は、英国のオープン・バンキング(全主要銀行)、米国のFDX(バンカメ、シティなど)で採用、全銀協のレポートでも推奨。
  • ファウンデーションに関わる知財管理を整理、世界中での「OpenID 」商標の登録と管理。
  • 関係者を引き込み、各種業界向けのニーズを取り込むWGの設立を援助。
  • スウェーデン・ウメオ大学との間でOpenID Connectのテスト・スイートの開発を着手。これは後にOpenID Certificationプログラムになりました。
  • カンファレンスでのスピーチ、個別会合、ブログ、Youtubeなどを通じて、OpenID Connectと関連技術を国際的に普及啓発。
  • ISO, ITU-T, OECDなどの国際機関とリエゾン関係を確立。
  • 米国、欧州、日本、南米におけるOpenID関連のイベントの企画

2018年はデジタル・アイデンティティ、プライバシー双方にとっての大きな変革の年となりました。

プライバシー側では、EUでGDPRが5月に全面施行、大規模なプライバシー侵害事件が続発、個人情報利用に関わる同意の問題に対する解の一つとしての日本における情報銀行認定制度の開始などがありました。

アイデンティティ管理側でも負けてはいません。高度顧客認証とAPI保護がオープン・バンキングとPSD2に相まって、最大のトピックになりました。これは他の地域にも拡大しており、オーストラリアでは更に、対象とするデータを金融以外にも広げています。FIDO 2.0とWeb Authentication標準も発行されました。ブロックチェーン・ベースの自己独立アイデンティティがスポットライトを浴びるにつれ、OpenID Connectのあまり知られていない機能である「自己発行型OpenIDプロバイダー(SIOP)」もあらたな関心を引いています。欧州委員会では、eKYC(顧客情報確認)の検討が始まり、ここでもOpenID Connectがプロトコルとして検討されています。そして、IDoT (Identity of Things) は相変わらず修復を要する社会的脆弱性としてのこり続けています。

換言するならば、OpenID Foundationには、世界に対して貢献すべきことがたくさん残されており、わたしたちはこのモメンタムをものにすべきなのです。

この目的のために、2019年には以下のことを推進していきたいと考えています。

  • FAPI セキュリティ・プロファイルとCIBA 1の普及促進
  • WGの活動を支援、高品質の標準規格の策定を促す
  • FAPIの認定制度を開始する
  • Aggregated Claimsモデルを強化、OpenID ConnectのSIOPを、プライバシー強化型の属性(含む eKYC用属性)提供スキームの要件を満たせるようにする。
  • アイデンティティ管理とAPI保護に関するベスト・プラクティスの普及啓発を継続する。

わたしのモットーは、「聞き、観察し、調整し、能動的に行動する」です。みなさまの 清き一票で 、わたしが「Open Identity」の普及を同志と共に推進していけるようにしていただければ幸いです。共に進めば、世界に影響を与え、それを実現することが可能になるでしょう。

Nat Sakimura (ナット・サキムラ)
Blog: https://nat.sakimura.org (英語) https://www.sakimura.org/ (日本語) 
Twitter: @_nat_en (英語) @_nat (日本語) 
Youtube: https://www.youtube.com/c/NatSakimura

脚注

  1. Client Initiated Backchannel Authentication

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