Lilium and Car mio ben - Machida Chima

Lilium「白百合」と Caro mio ben「愛しい人よ」covered by 町田ちま

もう還暦を過ぎた爺さんですが、VTuberはよく聞きます。儒烏風亭らでんの美術館がたり(実はわたしは美術が苦手なのでとても勉強になります)を聞いて勉強させていただいたり、壱百満天原サロメさんとアンジェリーナ・カトリーナさんのまったりした配信とかを聞いてほっこりしたりしていますが、最近発見したのは、上から読んでも下から読んでも「町田ちま」さんですね。彼女の歌う曲をよく聞いています。

Lilium ~ Elfen Lied

最初にあたった〜そしてはまったのはこの曲「Lilium」です。(◆Lyrics,Compose & Arrange 小西香葉 / Kayo Konishi 近藤由紀夫 / Yukio Kondo)

(図1) Lilium from Elfen Ried.

歌い方は合唱的な歌い方なので、返って聖性を高める形になっています。実に美しい。ある意味ボーイソプラノによったような歌い方とも言えるかもしれません。声はとても高いです。そこに、微妙なビブラートがかかったりなど、抑制されながらも非常に凝った歌い方になっています。作曲者御本人が歌っているものとはまた別の趣があっって好きです。町田ちまさん自身は歌は独学のようですが、才能があるひとはあるのですね。素晴らしいです。

この歌自身は、Elfen Lied という漫画〜アニメの主題歌で、歌詞はラテン語で書かれています。それぞれ、「詩篇」37-30よりとられていたり、「ヤコブ書」1-12よりとられていたり、グレゴリオ聖歌の「キリエ・エレイゾン」からとられていたり、中世のラテン語聖母賛歌「Ave mundi spes Maria (めでたし、世の希望、マリアよ)」よりとられたりしています。そうした関係で、西洋では宗派を問わず讃美歌として歌われることも多くなっている曲のようです。21世紀になってからラテン語で書かれる曲が極めて少ないというのもあるようです。

漫画・アニメのストーリーはかなり過激なものです。漫画連載のときから読んでいたのですが、「エルフェンリート」は、人類を滅ぼす可能性を持つ新人類「ディクロニウス」と呼ばれる少女ルーシーが主人公のSFサスペンスです。彼女は偶然知り合った青年コウタや周囲の人々と共同生活を送りつつ、人類とディクロニウスの悲惨な運命や過酷な過去と向き合います。暴力と愛、差別や赦しといった重いテーマを描く、血みどろの純愛・サイコサスペンスで、差別とは何かということを突きつけてくる問題作でもあります。かなりのスプラッターです。それを浄化するように流れるのが主題歌のLilium(ゆり)なのです。

(表1)はこの歌詞(ラテン語、日本語、出典)です。

Latin日本語出典
Os iusti meditabitur sapientiam,
Et lingua eius loquetur indicium.
正しき者の唇は知恵を語り
その舌は 公義を語る
「詩篇」37-30より
Beatus vir qui suffert tentationem, Quoniqm cumprobatus fuerit accipiet coronam vitae. 試錬を耐たえ忍しのぶ人は、さいわいである。それを忍とおしたなら、神を愛する者たちに約束されたいのちの冠を受うけるであろう「ヤコブの手紙」1-12より
Kyrie, ignis divine,eleison
主よ 聖なる炎よ、憐れみ給え
作詞家が既存の宗教用語や聖書、聖歌テキスト(「Kyrie eleison」「Beatus vir」「Ave mundi spes Maria」等)からインスピレーションを受けて独自に構成した一節
O quam sancta, quam serena,
quam benigma , quam amoena O castitatis lilium
何と慈悲深き哉 何と情愛厚き哉
おお、清廉なる白百合よ
中世のラテン語聖母賛歌「Ave mundi spes Maria1よりの引用
(表1)小西・近藤「Lilium」ラテン語歌詞と日本語粗訳および出典

ウクライナとパレスチナの現況を見て、今年のご挨拶はこの曲にしようかと思っています。週末に楽譜が届くはずなので楽しみです。

町田ちまさんの他のクラシックの曲「Caro mio ben (愛しい人よ)」

町田ちまさんはもう一曲クラシックの曲を録音しています「Car mio ben (愛しい人よ)」です。

『Caro mio ben(カーロ・ミオ・ベン)』は、18世紀のイタリア歌曲(アリエッタ)で、邦訳では「いとしい女(ひと)よ」という意味になります。作曲者は主にトンマーゾ・ジョルダーニ(Tommaso Giordani, 1730–1806)とされますが、長らくジュゼッペ・ジョルダーニと混同されてきた経緯があります。

内容は、「愛しい人よ、どうか私を信じてほしい。あなたがいなければ私の心は弱ってしまう」という、愛する人への切実な思いと嘆きを歌っています。原曲は独唱と弦楽四重奏のために書かれ、現在はピアノ伴奏などでも多く演奏されています

この曲は日本でも長らく親しまれ、小中高の音楽教材や声楽の基礎曲として多くの人に歌われてきました。歌詞はシンプルで覚えやすく、イタリア古典歌曲の代表的な一曲となっています

歌詞の内容からもわかるように、意中の相手への愛や離別の苦悩、信頼を願う気持ちが率直に込められており、恋愛歌の典型例ともいえる作品です

それでは聞いていただきましょう。町田ちまさんの Car mio ben (図2)です。

(図2)町田ちまさんカバーによる Caro mio ben

かなり高い音程のソプラノリリコで歌っておられます。心が洗われますね。歌詞はこんな感じ(表2)です。

イタリア語の歌詞日本語訳
Caro mio ben,いとしいいとしいあなたよ、
credimi almen,少なくとも信じておくれ、
senza di te languisce il cor.あなたなしではこの心は衰えてしまうのです。
Il tuo fedelあなたに誠実なこの私の心は、
sospira ognor.いつもため息をついています。
Cessa, crudel,もうやめてください、冷たい人よ、
tanto rigor!そんなにもつれない態度は。
(表2) Caro mio ben 歌詞

ちょっとちまさんだと、可愛すぎる気もしますね。でもすばらしいです。

わたしのおすすめは、メゾソプラノですが、Cecilia Bartoli (図3)です。最後の pp の美しいこと…。

(図3)Cecilia Bartoli による Caro mio ben”. pp が美しい。

ソプラノだと、Sumi Jo さんの良い録音(図4)があります。こちらもお楽しみください。

(図4)Sumi Jo による Caro mio ben

脚注

  1. Ave mundi spes Maria
    Ave mitis, ave pia,
    Ave plena gratia.
    Ave virgo singularis,
    Quae per rubum designaris
    Non passum incendia.
    Ave rosa speciosa,
    Ave Jesse virgula:
    Cujus fructus nostri luctus
    Relaxavit vincula.
    Ave cujus viscera
    Contra mortis foedera
    Ediderunt Filium.
    Ave carens simili,
    Mundo diu flébili
    Reparasti gaudium.
    Ave virginum lucerna,
    Per quam fulsit lux superna
    His quos umbra tenuit.
    Ave Virgo de qua nasci,
    Et de cujus lacte pasci
    Rex caelorum voluit.
    Ave gemma caeli luminarium.
    Ave Sancti Spiritus sacrarium.
    O quam mirabilis,
    Et quam laudabilis,
    Haec est virginitas!
    In qua per Spiritum
    Facta Paraclitum
    Fulsit foecunditas.
    O quam sancta, quam serena,
    Quam benigna, quam amoena
    Esse Virgo creditur!
    Per quam servitus finitur,
    Porta caeli aperitur,
    Et libertas redditur.
    O castitatis lilium,
    Tuum precare Filium,
    Qui salus est humilium:
    Ne nos pro nostro vitio,
    In flebili judicio
    Subjiciat supplicio.
    Sed nos tua sancta prece
    Mundans a peccati faece
    Collocet in lucis domo.
    Amen dicat omnis homo.

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