英国、デジタルIDサービスを確立、データ共有を強化し、データ保護当局を改革する法案提出へ

「国王のスピーチ」に関する報告書のP.39〜41に、英国政府による新たなデジタル情報およびスマートデータ(Digital Information and Smart Data, DISD)法案の計画が述べられています。この法案は、データの力を経済成長、現代のデジタル政府の支援、および人々の生活改善のために活用するもので、デジタル確認サービスの確立、オープンバンキングのスキームを他へ拡大するスマート・データ・スキームの設置、国家地下財産登録簿の整備、ICOの組織改革など、重要な点がいくつも含まれます。

これは、人々の生活をより便利にし、経済成長にもつながる、安全で安心なデジタルアイデンティティサービスを選択できるよう支援する法案です。新英国政府の第1回議会に提出される見込みです。

法案の動画版解説

法案の概要解説テキスト版

英国政府が新たなデジタル情報及びスマートデータ法案の提出を計画しています。この法案はデジタル時代における個人情報の取り扱いや経済成長に大きな影響を与える可能性があります。法案の目的はデータの力を活用して経済成長を促進し、近内的なデジタル政府を支援し、人々の生活を向上させることです。具体的にはデジタル確認サービスの確立、オープンバンキングの拡大、国家値財産登録簿の整理、情報コミッショナー事務局の改革などが含まれています。

デジタル確認サービスは安全で信頼できるデジタルIDの創出と採用を支援するものです。これにより引っ越しや雇用前チェック、年齢制限のある商品やサービスの購入など、日常生活の様々な場面で便利になることが期待されます。国家地下財産登録簿は地下にある配管やケーブルなどのインフラ情報をデジタル地図するものです。これにより工事や修理の際に必要な情報に素早くアクセスでき、作業の効率化と安全性の向上につながります。

スマートデータスキームは顧客の同意のもと、承認された第3者プロバイダーと顧客データを安全に共有する仕組みです。これは現在のオープンバンキングの概念を他の分野にも拡大するもので、より良いサービスや商品の提供につながる可能性があります。

またこの法案では、公共サービスのデジタル化も進められます。例えば出張や死亡の登録が電子システムに移行されたり、医療福祉システムのITサプライヤーに情報標準が適用されたりします。

科学研究の分野ではデータ法の現代化が図られます。科学者たちは研究のための包括的な同意を得やすくなり、商業的環境で研究を行うものも平等にデータ制度を利用できるようになります。これにより学際的な研究がより進みやすくなることが期待されます。

個人情報保護の面ではICOの組織改革と権限強化が行われます。CEOと取締役会議長を備えた現代的な組織構造に変革され、新たな権限も付与されます。これにより急速に進化するデジタル社会におけるプライバシー保護がより強化されることになります。またデジタルアイデンティティに関するプライバシー、セキュリティ、包摂性の基準も推進されます。これは誰もが安心してデジタルサービスを利用できる環境作りを目指すものです。

さらに子供の死亡に関する調査のためのデータ共有も改善されます。これにより悲劇的な事故の再発防止につながる可能性があります。

この法案はデジタル時代におけるデータの利活用を促進しそのデータを活用した経済船長や生活の質の向上を追求する試みと言えます。その中心に来るのが自分が何者であるかを表明することを支援するデジタル確認サービスとオープンバンキングをモデルに取ったスマートデータスキームであるということは大変興味深いことです。

しかしこの法案が実際にどのように運用されるのかどの程度の効果をもたらすのかについては、今後の展開を注視する必要があります。デジタル社会が急速に発展する中でこのような法整備は非常に重要ですが、同時に技術の進歩に法制度が追いつけるかどうかも課題となるでしょう。さらにこの法案な他国のデータ関連法制にどのような影響を与えるかも注目されます。GDPRと違い域外適用があるわけではありませんが英国のオープンバンキングは多くの国に影響を与えてきました。今回も同様に影響を与えるのか注視されます。

デジタル情報・スマートデータ法案説明和訳


  • 政府は、経済成長のためにデータの力を確実に活用し、近代的なデジタル政府を支援し、人々の生活を向上させたいと考えています。
  • 法案は、データの新たな革新的利用を安全に開発・展開することを可能にし、データ共有と基準を改革することで公共サービスをより良く機能させることで人々の生活を向上させ、データ法を改善することで科学者や研究者がより多くの生命を向上させる発見をするのを助け、規制当局(ICO)に新たな強力な権限とより近代的な構造を与えることであなたのデータが確実に保護されるようにします。これらの措置は、科学技術を通じて英国国民により良いサービスを提供するという政府の公約の実現に着手するものです。

法案の内容は?

  • この法案は、データの力を経済成長のために活用するものです。わたしたちは、人々が参加することを選択でき、英国全体のイノベーション、投資、生産性を加速させる3つの革新的なデータ活用を法定化します。これには以下が含まれます:
    • デジタル確認サービス1の確立:これは、革新的で安全な技術を通じて、人々の日常生活を容易にするものです。これらの措置は、認定されたプロバイダーが提供する安全で信頼できるデジタル・アイデンティティ製品およびサービスの創出と採用を支援するもので、引っ越し、雇用前チェック、年齢制限のある商品やサービスの購入などに役立ちます。
    • 国家地下財産登録簿の開発:これは、私たちの足下に埋まっているパイプやケーブルの設置、保守、運用、修理の方法に革命をもたらす新しいデジタル地図です。これにより、設計者や掘削業者は、作業を効果的かつ安全に遂行するために必要なデータに、必要なときに、標準化された安全な方法で即座にアクセスできるようにります。
    • スマート・データ・スキームの設置:これは、顧客の要求に応じて、承認された第三者プロバイダーと顧客のデータを安全に共有するものです。
  • 本法案は、人々の生活と人生のチャンスを向上させます。法案は、より多く、より良いデジタル公共サービスを可能にします。デジタル経済法を改正することで、公共サービスを利用する企業に関するデータを政府が共有できるようにします。出生と死亡の登録は電子システムに移行します。また、医療・福祉システムのITサプライヤーに情報標準を適用します。
  • この法案は、現代の学際的な科学研究の実態をデータ法に反映させることで、科学者たちが世界クラスの研究のためにデータをより有効に活用できるよう支援します。科学者たちは科学研究の広範な分野について包括的な同意を求めることができるようになり、また、商業的環境で科学研究を行う正当な研究者たちも、私たちのデータ制度を平等に利用できるようになります。
  • この法案はあなたのデータが十分に保護されることを保証します。我々は情報コミッショナー事務局(ICO)を近代化し、強化します。ICOは、CEOと取締役会、議長を備えたより現代的な規制構造に変革されます。そして、新たなより強力な権限を持つことになります。これに伴い、一部のデータ法に的を絞った改革が行われますが、これは高い保護基準を維持しつつ、現在、一部の新技術の安全な開発と展開を妨げている不明確さがある部分に対処するものです。また、プライバシー、セキュリティ、包摂性に関するデジタルアイデンティティの基準も推進します。
  • この法案はまた、検視官(そしてスコットランドでは検察官)が、子どもの死亡に関する調査を支援するために必要かつ適切だと判断した場合に開始できるデータ保存プロセスを確立します。これにより、検視官は子どもの死亡を調査する際に必要なオンライン情報へのアクセスが容易になります。

領土と適用範囲

  • 法案は英国全土に拡大適用されます。

主な事実

  • デジタル検証サービスは、人々と企業が自信と安心をもって身元確認技術を最大限に活用できるよう支援します。デジタル検証サービスは、日常生活を送る中で自分自身に関することを証明するための便利で信頼できるオプションを提供することにより、人々の時間と費用を節約します。また、よりスムーズで安価、かつ安全なオンライン取引が可能になります。デジタル検証サービスは、コスト、時間、データ漏洩を削減することで、企業の日常的な負担を軽減します。安全なデジタル・アイデンティティが英国で広く使用されることによる経済効果は、年間約6億ポンドと見積もられています。
  • スマートデータとは、顧客(企業または消費者)の要求に応じて、顧客データをより広範で文脈のある「ビジネス」データで強化できる認定第三者プロバイダー2(ATP)と安全に共有することを指します。これらのATPは、意思決定や市場への関与を改善する革新的なサービスを顧客に提供します。オープンバンキングは、「スマートデータスキーム」というに値する制度の唯一の実施例ですが、永続的な基盤を確立し、そこから成長・拡大するために立法的枠組みが必要です。これにより、顧客はより情報に基づいた選択ができるようになり、企業にはイノベーションのためのツールキットが提供されます。消費者が自身のデータを各部門と共有できるようにすることで、オープンバンキングで見られた経済成長を経済全体に広げることも期待しています。これは特に、顧客の関与が低い市場や、企業が顧客よりも多くの情報やデータを保持している市場において重要です。
  • 国家地下資産登録簿3(NUAR)は、私たちの足元に埋設されているパイプやケーブルの設置、保守、運用、修理の方法を革新する新しいデジタルマップです。NUARは、プランナーや掘削作業者に、効率的、効果的、そして安全に作業を行うために必要なデータへの標準化された、安全な、即時のアクセスを提供します。彼らが必要とする時に、必要なデータを得ることができます。
  • 英国のデータ経済(データ市場と、データが経済の他部門に付加する価値)は、現在(2022年時点)GDPの推定6.9%を占めています。私たちはデータの力を活用することで、経済やより広範な社会に莫大な価値を生み出すことができます。英国のデータ経済は、貿易を促進するためにも極めて重要です。2021年には、データを活用した英国のサービス輸出はサービス輸出全体の85%を占め、その額は 2590億ポンドに上ると推定されます。英国からEUへのデータ対応輸出額だけでも910億ポンドと推定されます。
  • 英国企業にとってデータは不可欠です。英国企業の77%が何らかの形でデジタルデータを扱っており、10人以上の従業員を抱える企業では99%に上ります。

脚注

  1. Digital Verification Services
  2. authorised third-party providers
  3. National Underground Asset Register

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