Panel: Open Banking と Open Data を成功裏に実装するには

(2024年6月30日に、Claude.ai を使って、内容を大幅にアップグレードしました。各国の状況なども記載しました)

Identiverse 2022 で、「How to Implement Open Banking and Open Data Successfully」というパネルディスカッションにモデレータとして参加しました。

日時:2022年6月22日 4:10 pm – 5:00 pm MDT
場所:Gayloard Rocky Conference Center Crest 3-5

パネリストは以下の通りです。

Dave Tonge氏はOpenID FoundationのFAPI WGの共同議長(Co-chair)です。欧州において活動するFintech企業のMoneyHub社のCTOでもあり、英国Fintech協会の主要人物の一人です。英国や欧州におけるOpen Banking および PSD2 の法規制に関するコメントなどもFintechの立場から多数入れている人物です。

Wesley Dunnington氏は、主に米国を中心に活動する、銀行を主要メンバーとするOpen Bankingの標準化団体「Financial Data Exchange (FDX)」のセキュリティWGの議長です。OpenID Foundationの理事の一人でもあり、OpenID Foundation と FDXの橋渡しをしています。

Ralph Bragg 氏はRadium社という英国のFintech企業のCTOです。彼は以前は英国のOpen Banking Implementation Entity で Open Banking Directory の設計やConformance testの構築を行っていました。Radium社はこの知見をもって、各地にサービスを提供しており、ブラジルのOpen Bankingのdirectoryやconformanceテストは同社が多く関わっています。OpenID FoundationのFAPI WGの古参メンバーです。

パネルディスカッションでは、まず「なにゆえにOpen Bankingをするのか?」ということを私から提示し、その後お三方から、実際にOpen Bankingを成功裏に実装するには何が重要かというご知見を伺う形を取りました。

パネルの内容

このパネルの大まかなまとめをするとこんな感じになります。

  1. オープンバンキングの重要性
    オープンバンキングは、金融サービスの革新と競争を促進する重要な取り組みとして世界中で注目されています。主な目的は、サードパーティプロバイダーの銀行データへのアクセスを簡素化し、同時にユーザーのセキュリティとプライバシーを保護することです。
  2. 技術的側面
    FAPIなどの標準化されたセキュリティプロファイルと適合性テストが、成功したオープンバンキング実装の鍵となっています。これにより、異なる金融機関やフィンテック企業間の相互運用性が確保されます。
  3. グローバルな実装状況
    各国・地域で異なるアプローチが取られています:
    • 英国とEU:規制主導型のアプローチ
    • 米国:市場主導型のアプローチ
    • ブラジル:迅速な実装と革新的なユースケース
    • オーストラリア、カナダ、中東:学習と適応の過程
  4. 課題と学び
    • ユーザーエクスペリエンスの重要性
    • 規制当局の役割の重要性
    • 詐欺防止とAMLへの取り組み
    • 銀行とフィンテックの協力の必要性
  5. 将来の展望
    • オープンバンキングは単なるデータ共有を超え、新しい金融サービスやビジネスモデルの創出につながる可能性があります。また、国境を越えた金融サービスの提供や、より包括的な金融エコシステムの構築にも貢献する可能性があります。
  6. 重要な考慮事項
    • 標準化と適合性テストの継続的な改善
    • セキュリティと利便性のバランス
    • 規制と市場ニーズの調和
    • グローバルな相互運用性の実現

このパネルは、オープンバンキングが金融サービスの未来を形作る重要な要素であり、その成功には技術、規制、ビジネスモデルの適切な組み合わせが必要であることを強調しました。

詳細

このパネル・ディスカッションはYoutube上でも見ることができます。残念ながら、Q&AのQは聞き取れませんが…。大まかな、セクションとタイムスタンプは以下のとおりですので、ご感心のある場所に飛んで見ていただくのも良いと思います。

1. イントロダクションとパネリストの紹介 (0:00 – 1:38)

  • Nat Sakimuraがオープンバンキングとオープンデータの実装に関するパネルを紹介
  • パネリストの自己紹介:
    • Dave Tong: MoneyHubのCTO、OpenID FoundationのFAPI作業グループの共同議長
    • Ralph Bragg: RadiumのCTO、主要なオープンバンキング実装に関与
    • Wes Dunnington: Ping IdentityのアーキテクチャVP

2. オープンバンキングに関するホワイトペーパー (1:43 – 3:26)

  • 2つのホワイトペーパーについて議論:
    1. 発行済みペーパー:「オープンバンキング、オープンデータ、金融グレードAPI」
    2. 作業ドラフト:オープンバンキング/ファイナンスにおけるグローバル相互運用性の将来状態
  • 作業ドラフトへのフィードバック要請

3. オープンバンキングの主要要件 (3:32 – 5:53)

  • 2つの主要テーマ:
    1. サードパーティプロバイダーの銀行への接続を簡素化
    2. ユーザーのセキュリティとプライバシーを保護
  • 歴史的背景:英国オープンバンキングスタンダード(2015-2016)
  • 目標:ユーザー同意ベースのデータアクセス、サイロの解体、イノベーションの促進

4. オープンバンキングの技術コンポーネント (5:54 – 11:45)

機能的API仕様

1. 定義

  • 機能的API仕様は、銀行やフィンテック企業が共有するデータの具体的な内容とフォーマットを定義します。
  • 口座情報、取引履歴、支払い指示などが含まれます。

2. 標準化の課題

  • 機能的API仕様の完全な国際標準化は困難です。
  • 各国や地域で異なる金融商品や規制が存在するからです。

3. 柔軟性の重要性

  • 地域や国ごとの特性に対応できるよう、ある程度の柔軟性が必要になります。
  • 例:401(k)のような特定の国の退職金制度に関するデータ構造

4. 実装の容易さ

  • 機能的API仕様の違いは、比較的対応が容易です。
  • 主にマッピングコードの作成で解決可能です。

5. フォーカスの移行

  • FAPIワーキンググループは当初、機能的API仕様の標準化も目指していました。
  • その後、セキュリティプロファイルに重点を移行しました。

6. オープンバンキングの進化

  • 機能的API仕様は、オープンバンキングの発展に伴い進化しています。
  • 新しい金融商品やサービスの登場に応じて拡張されていっています。

7. ユースケースの多様性

  • 様々なユースケースをサポートする必要性があります。
    • 口座情報の取得
    • 支払い指示
    • 与信審査 など

8. データモデルの重要性

  • 一貫性のあるデータモデルの定義が重要です。
  • これにより、異なるシステム間でのデータ解釈を容易になります。

9. バージョン管理

  • 定期的な更新と適切なバージョン管理が重要です。
  • 新機能の追加と後方互換性の維持のバランスを取る必要があります。

10. 実装の優先順位

  • セキュリティプロファイルの標準化を優先すべきです。
  • セキュリティ確保後に機能的側面に焦点を当てることを推奨します。

機能的API仕様は、オープンバンキングの基本的な機能を定義する重要な要素ですが、完全な国際標準化には課題があります。セキュリティと認証の標準化に重点を置きつつ、機能的側面では一定の柔軟性を持たせるアプローチが採用されつつあります。

セキュリティプロファイル(FAPI)

1. FAPIの定義

  • FAPI: Financial-grade API(金融グレードAPI)セキュリティプロファイルです。
  • OAuth 2.0とOpenID Connectをベースにした高セキュリティプロファイルです。

2. 目的

  • 金融データやトランザクションの高度なセキュリティ保護
  • 銀行とフィンテック企業間の安全な通信の確立

3. 主要な特徴

  • 強力なクライアント認証メカニズム
  • トークンのセキュアな取り扱い(Sender Constrained Tokenへの統一)
  • 暗号化と署名の厳格な要件

4. FAPIのバージョン

  • FAPI 1.0: 現在広く採用されているバージョン
  • FAPI 2.0: より簡素化され、実装が容易になった新バージョン

5. 標準化の重要性

  • 異なる金融機関およびフィンテック間の相互運用性の確保
  • 開発者の実装負荷の軽減

6. 適合性テスト

  • 厳格な適合性テストスイートの提供がされている
  • これにより、各種実装の一貫性と信頼性の確保がされている

7. グローバルな採用

  • 英国、ブラジル、オーストラリアなど多くの国で採用。
  • 国際的な金融サービスの相互運用性向上に貢献している。

8. セキュリティの検証

  • 形式的検証(Formal Verification)の実施
  • 数学的手法による安全性の証明

9. 実装の課題

  • 高度な技術要件による実装の複雑さ
  • 既存システムとの統合における課題

10. 将来の展望

  • オープンファイナンス、オープンインシュランスへの拡張
  • より広範な金融サービスへの適用

11. 業界への影響

  • フィンテック企業の参入障壁低下
  • 銀行のAPIセキュリティ標準の向上

12. 規制との関係

  • 多くの国の規制当局がFAPIを推奨または要求
  • コンプライアンス要件の一部として採用される傾向

FAPIは、オープンバンキングにおけるセキュリティの要となるプロファイルであり、その採用は世界中で拡大しています。高度なセキュリティ要件と厳格な適合性テストにより、安全で信頼性の高い金融APIの実現に貢献しています。

同意と認可の管理

1. 重要性

  • オープンバンキングの核心的要素
  • ユーザーのデータ保護とプライバシー確保の基盤

2. 標準化の必要性

  • FAPI 2.0で同意と認可の標準化が進められている
  • 一貫性のある同意プロセスの確立が目標

3. ユーザー体験

  • 同意プロセスの簡素化と透明性の確保が課題
  • ユーザーが理解しやすい同意フローの設計が重要

4. 同意の粒度

  • データアクセスの範囲と期間を細かく制御できる仕組みが必要
  • ユーザーが特定のデータ項目や期間を選択できる柔軟性

5. 同意の撤回と管理

  • ユーザーが容易に同意を撤回できる仕組みの重要性
  • 同意状況を一覧で確認・管理できるダッシュボードの提供

6. 規制との整合性

  • GDPRなどのデータ保護規制との整合性確保
  • 各国・地域の規制要件に対応できる柔軟性

7. セキュリティとの関連

  • 強力な認証メカニズムと連携した同意プロセス
  • 不正アクセスや同意の悪用を防ぐセキュリティ対策

8. 銀行の責任

  • 適切な同意管理を行う銀行の責任の重要性
  • ユーザーの信頼を維持するための透明性確保

9. フィンテック企業の役割

  • 同意の範囲と目的を明確に説明する責任
  • データの適切な使用と保護の確保

10. 継続的な改善

  • ユーザーフィードバックに基づく同意プロセスの継続的改善
  • 新たな技術やユースケースに対応した柔軟な進化

11. 教育と啓発

  • ユーザーに対する同意と認可の重要性の教育
  • オープンバンキングの利点とリスクに関する啓発活動

同意と認可の管理は、オープンバンキングの成功に不可欠な要素であり、ユーザーの信頼を獲得し維持するための鍵となります。標準化と使いやすさのバランスを取りながら、セキュリティと透明性を確保することが重要です。

標準化と適合性テストの重要性に関する議論

標準化と適合性テストの重要性に関しては以下のようなことが議論されました:

1. 標準化の意義

  • 相互運用性の確保
  • 開発コストの削減
  • イノベーションの促進

2. FAPIの役割

  • セキュリティプロファイルの標準化
  • OAuth 2.0とOpenID Connectをベースにした高度なセキュリティ要件の定義

3. 適合性テストの重要性

  • 実装の一貫性確保
  • セキュリティレベルの保証
  • 相互運用性の実現

4. 英国の事例

  • 共通APIの採用
  • 厳格な適合性テストの実施
  • エコシステムの信頼性向上に貢献

5. 適合性テストの課題

  • テスト環境と本番環境の差異
  • 継続的なテストと認証の必要性
  • テスト結果の透明性確保

6. 市場主導vs規制主導

  • 市場主導アプローチにおける標準化の課題
  • 規制当局による標準採用の推進

7. グローバルな標準化の難しさ

  • 各国・地域の規制の違い
  • 既存システムとの統合における課題

8. 適合性テストの進化

  • 新たな脅威やユースケースへの対応
  • テスト手法の継続的な改善

9. 開発者の視点

  • 標準化による開発負荷の軽減
  • 適合性テスト通過の重要性認識

10. エコシステム全体への影響

  • 参入障壁の低下
  • 信頼性の向上によるユーザー採用の促進

11. 将来の展望

  • オープンファイナンスへの拡張
  • クロスボーダー取引における標準化の重要性

12. 教訓

  • 標準だけでは不十分、適合性テストが鍵
  • 実装の詳細に至るまでの一貫性確保が重要

標準化と適合性テストは、オープンバンキングの成功に不可欠な要素であることが強調されました。特に、単に標準を定義するだけでなく、その正確な実装を保証する適合性テストの重要性が繰り返し指摘されました。これにより、セキュリティ、相互運用性、そして最終的にはエコシステム全体の信頼性が確保されるとの認識が共有されています。

5. 各国のオープンバンキング実装状況 (11:46 – 23:19)

英国と欧州の状況

英国と欧州のオープンバンキングの状況について、以下のことが話されました:

  1. 規制主導型アプローチ:
    • 英国とEUは共に規制主導型のアプローチを採用しています。
    • EUではPSD2(改正決済サービス指令)が、英国では競争・市場庁(CMA)の指令が基盤となっています。
  2. 英国の先進的な取り組み:
    • 英国は欧州の中でもオープンバンキングの実装が最も進んでいる国の一つです。
    • 共通APIの採用や厳格な適合性テストの実施により、高度な標準化を実現しています。
  3. EUの課題:
    • EUでは各国で実装レベルにばらつきがあり、完全な統一性が達成されていません。
    • ベルリングループやSTETのスタンダードなどの「共通規格」があるものの、オプション性が高く、完全な互換性が保証されていません。実態としては4000の規格が乱立している状況です。そのため、4〜5社の巨大アグリゲーターが出現して接続性を確保する形になっています。PSD3ではこのあたりが改善されることを期待しています。
  4. 英国のFAPI採用:
    • 英国はFAPI(金融級API)を採用し、セキュリティと相互運用性を高めています。
    • これにより、フィンテック企業の参入障壁が低下し、イノベーションが促進されています。
  5. ユーザー体験の重視:
    • 特に英国では、ユーザー体験の向上に重点が置かれています。
    • 例えば、アプリ間のスムーズな遷移(app-to-app redirection)の実装が義務付けられています。
  6. データ共有を超えた展開:
    • 支払い指示や口座情報の共有など、単なるデータ共有を超えたサービスが展開されています。
    • 特に英国では、税金の支払いなど、政府サービスとの連携も進んでいます。
  7. 適合性テストと認証:
    • 英国では厳格な適合性テストと認証プロセスが実施されており、これがエコシステムの信頼性向上に寄与しています。
    • EUでは、この点でまだ課題が残っています。
  8. 市場の成熟度:
    • 英国では毎月数百万人のアクティブユーザーがオープンバンキングサービスを利用しており、市場が成熟段階に入っています。
    • EUの他の国々では、普及率にばらつきがあります。
  9. フィンテックエコシステムの発展:
    • オープンバンキングの進展により、特に英国でフィンテック企業の成長が加速しています。
    • 個人財務管理、与信審査、支払いサービスなど、様々な革新的サービスが登場しています。
  10. 今後の課題:
    • データセキュリティとプライバシー保護の継続的な強化。
    • クロスボーダー取引やより広範な金融サービス(オープンファイナンス)への拡大。
    • ユーザー認知度の向上と利用促進。
  11. EUと英国の差異:
    • ブレグジット後、英国とEUの規制環境に差異が生じつつあり、今後の展開に注目が集まっています。

英国と欧州のオープンバンキング状況は、規制主導型アプローチの利点と課題を示す好例となっています。特に英国の成功事例は、他の国々にとって参考になる一方で、EU全体としての統一的な実装にはまだ課題が残されています。

ブラジルの迅速な実装

  1. 迅速な実装
    • パネルでは、ブラジルが他の国々と比較して非常に速いペースでオープンバンキングを実装したことが強調されました。英国が5年以上かけて実装したのに対し、ブラジルはわずか1年で実装を完了しました。
  2. 国際標準の採用
    • ブラジルは、他の国々の経験から学び、国際的な標準(特にFAPI)を採用しました。これにより、「車輪の再発明」を避け、既に検証された方法を活用することができました。
  3. 包括的なアプローチ
    • ブラジルは当初から支払いを含む包括的なアプローチを取りました。これは、単にデータ共有だけでなく、金融サービス全体を考慮した実装であることを意味します。
  4. 規制と市場の協力
    • 規制当局と市場参加者が密接に協力し、効果的な実装を実現しました。これにより、技術的な標準と規制要件の調和が図られました。
  5. 革新的なユースケース
    • ブラジルは、既存の機能を実装するだけでなく、新しい革新的なユースケースも導入しています。例えば、「Pix」と呼ばれる即時支払いシステムや、デカップル支払い(商品購入時にワンクリックで直接銀行口座から支払いを行う仕組み)などが挙げられます。
  6. 認証と認可の統一
    • ブラジルは、中央の認証・認可システムを採用し、フィンテック企業や銀行が容易に連携できる環境を整備しました。これにより、セキュリティを維持しながら、システム間の相互運用性を高めることができました。
  7. 継続的な発展
    • オープンバンキングの基本的な実装後も、ブラジルは保険分野(オープンインシュアランス)など、他の金融サービス分野への拡大を迅速に進めています。
  8. 技術的な一貫性
    • ブラジルは、FAPIの採用と厳格な適合性テストにより、高度な技術的一貫性を実現しました。これにより、開発者は最小限のコード(パネルでは「220行のNode.js」と言及)で全銀行システムにアクセスできるようになりました。
  9. ブラジルの事例は、明確なビジョン、国際標準の採用、規制と市場の協力、そして革新への開放性が、オープンバンキングの迅速かつ効果的な実装につながることを示しています。これは、他の国々がオープンバンキングを実装する際の参考モデルとなっています。

オーストラリアの課題と軌道修正

オーストラリアのオープンバンキング実装における課題と軌道修正について、以下のようにまとめることができます:

  1. 当初の課題:
    • 独自のセキュリティプロファイルの開発: オーストラリアは initially 国際標準を採用せず、独自のセキュリティと認証メカニズムを開発しようとしました。
    • 実装の遅れ: 独自システムの開発により、実装が遅れ、他の国々(特にブラジル)と比較して進捗が遅くなりました。
    • 相互運用性の問題: 独自のアプローチにより、国際的な金融システムとの相互運用性に課題が生じました。
    • 複雑性の増加: カスタマイズされたソリューションは、銀行やフィンテック企業にとって実装と維持が複雑になりました。
  2. 軌道修正:
    • FAPI 2.0の採用決定: オーストラリアの銀行業界は、国際標準であるFAPI 2.0を採用することを決定しました。
    • 規制当局の支持: この決定は銀行からのロビー活動の結果であり、規制当局も支持しました。
    • 相互運用性の向上: この移行により、国際的な金融システムとの相互運用性が向上することが期待されています。
    • 実装の加速: 既存の国際標準を採用することで、実装プロセスの加速が見込まれています。
    • エコシステムの発展: この変更により、オーストラリアのオープンバンキングエコシステムがより迅速に発展することが期待されています。
  3. 教訓:
    • 国際標準の重要性: この事例は、国際標準を採用することの重要性を示しています。
    • 柔軟性の必要性: 初期の決定を見直し、より効果的なアプローチに移行する柔軟性の重要性が強調されました。
    • 業界の声の重要性: 銀行業界からのフィードバックが政策変更につながったことは、業界の声を聞くことの重要性を示しています。

オーストラリアの事例は、オープンバンキング実装における課題と、それを克服するための柔軟なアプローチの重要性を示しています。この経験は、他の国々がオープンバンキングを実装する際の貴重な教訓となっています。

米国の市場主導アプローチ

  1. 規制主導ではなく市場主導:
    • 欧州や英国とは異なり、米国では政府による強制的な規制がありません。
  2. 代わりに、市場の需要と競争がオープンバンキングの発展を推進しています。
  3. 消費者需要の重要性:
    • フィンテック企業や革新的な金融サービスに対する消費者の需要が高まっています。
    • これにより、銀行はデータアクセスを提供するよう市場圧力を受けています。
  4. Financial Data Exchange (FDX)の役割:
    • FDXは業界主導の非営利組織で、オープンバンキング標準の開発を行っています。
    • FDXはFAPIを規範的標準として採用し、セキュリティ面での国際標準への整合を図っています。
  5. 段階的な進展:
    • 標準化や相互運用性の実現は段階的に進んでいます。
    • 初期には各銀行が独自のAPIを開発する傾向がありましたが、徐々に標準化が進んでいます。
  6. 認証と認可の課題:
    • 統一された認証・認可システムがないため、各銀行との個別の契約が必要となる場合があります。
    • これは特に小規模なフィンテック企業にとって障壁となっています。
  7. データディレクトリの構築:
    • FDXは登録された事業体のディレクトリを構築中で、これにより市場主導型の中央情報源が提供されることになります。
  8. セキュリティと適合性テストの課題:
    • FAPIの採用は進んでいますが、厳格な適合性テストはまだ完全には実施されていません。
    • これにより、実装の一貫性に課題が残っています。
  9. 既存の事業者への影響:
    • データアグリゲーターなどの既存の中間業者は、オープンバンキングの進展により事業モデルの変更を迫られる可能性があります。
  10. 規制の可能性:
    • 現時点では規制がありませんが、将来的に何らかの規制が導入される可能性も議論されています。
  11. イノベーションと競争:
    • 市場主導アプローチにより、イノベーションと競争が促進されています。
    • しかし、標準化の遅れにより、相互運用性に課題が残っています。
  12. 米国の市場主導アプローチは、イノベーションを促進する一方で、標準化や相互運用性の面で課題も抱えています。このアプローチの成功は、業界の自主的な取り組みと、消費者需要のバランスにかかっていると言えます。

カナダの初期段階

  1. 規制機関の設立:
    • カナダは現在、オープンバンキングを監督する規制機関を設立する過程にあります。
    • この機関は、オープンバンキングの実装を指導し、監督する役割を担うことが期待されています。
  2. 国際的なベストプラクティスの学習:
    • カナダの規制当局は、他の国々の経験から学ぼうとしています。
    • 特に英国のオープンバンキング実装や、米国の市場主導アプローチから教訓を得ようとしています。
  3. 関係者との対話:
    • 規制当局は、英国のオープンバンキング関係者や米国のFDX関係者など、様々な専門家と対話を行っています。
    • これにより、成功事例や課題について直接的な洞察を得ようとしています。
  4. 慎重なアプローチ:
    • カナダは急いで実装を進めるのではなく、慎重に計画を立てている段階にあります。
    • これは、他国の経験から学び、最適なアプローチを見出すための時間を取っていることを示しています。
  5. バランスの模索:
    • 規制主導型と市場主導型のアプローチのバランスを模索しています。
    • 消費者保護と革新促進の両立を目指しています。
  6. 標準化への関心:
    • 国際的な標準(特にFAPI)の採用について検討しています。
    • これは、将来的な国際的相互運用性を確保するための重要なステップとなる可能性があります。
  7. 業界の参加:
    • 銀行やフィンテック企業など、業界関係者の意見を積極的に聞いています。
    • これにより、実践的で実行可能なフレームワークの開発を目指しています。
  8. 消費者中心のアプローチ:
    • 消費者の選択肢を増やし、より良い金融サービスを提供することを目標としています。
    • データセキュリティとプライバシー保護が重要な焦点となっています。
  9. 段階的な実装の可能性:
    • 一度にすべてを実装するのではなく、段階的なアプローチを検討しています。
    • これにより、各段階で学びを得て、必要に応じて調整を行うことができます。
  10. 将来への期待:
    • オープンバンキングが金融イノベーションを促進し、カナダの金融サービス業界を強化することへの期待があります。
  11. カナダのアプローチは、慎重で包括的であり、国際的な経験から学びつつ、カナダ固有の状況に適したモデルを開発しようとしています。この初期段階での十分な準備と計画が、将来的な成功につながることが期待されています。

中東とアフリカの関心の高まり

  1. 急速な関心の高まり:
    • 中東とアフリカの多くの国々で、オープンバンキングへの関心が急速に高まっています。
    • これは、デジタル経済の発展と金融包摂の促進を目指す広範な取り組みの一部です。
  2. 英国モデルの影響:
    • 多くの中東諸国が英国のオープンバンキングモデルを参考にしています。
    • これは、過去の英国との関係や、英国モデルの成功に基づいています。
  3. 国際標準の採用:
    • FAPI(金融級API)などの国際標準の採用を検討している国が増えています。
    • これにより、グローバルな金融システムとの相互運用性を確保しようとしています。
  4. 規制当局の積極的な関与:
    • 多くの国の規制当局が、オープンバンキングの枠組み作りに積極的に関与しています。
    • デジタル経済の促進を目指す政府の方針と連動しています。
  5. 広範な適用範囲:
    • 多くの国々が、単なる銀行データの共有を超えて、より広範な金融サービスへのオープンアクセスを検討しています。
    • これには保険、投資、その他の金融サービスが含まれる可能性があります。
  6. デジタル変革の加速:
    • オープンバンキングは、地域全体のデジタル変革を加速させる触媒として見られています。
    • これは、フィンテック企業の成長と既存の金融機関の近代化を促進することが期待されています。
  7. 金融包摂の促進:
    • 特にアフリカでは、オープンバンキングが金融包摂を促進する手段として注目されています。
    • これにより、従来の銀行サービスにアクセスできなかった人々に新たな金融サービスを提供することが期待されています。
  8. 各国の状況に応じたアプローチ:
    • 各国が自国の状況に合わせてオープンバンキングのアプローチを調整しています。
    • 規制環境、技術インフラ、消費者ニーズなどが考慮されています。
  9. 技術的課題への対応:
    • データセキュリティ、プライバシー保護、APIの標準化などの技術的課題に取り組んでいます。
    • 多くの国が国際的なベストプラクティスを参考にしています。
  10. 将来の展望:
  11. オープンバンキングは、より広範なデジタル経済戦略の一部として位置付けられています。
  12. 多くの国が、オープンバンキングを通じて金融イノベーションとデジタル経済の成長を促進することを目指しています。
  13. 中東とアフリカでのオープンバンキングの発展は、まだ初期段階にありますが、多くの国が積極的にこの分野に取り組んでいます。地域の特性に合わせたアプローチと国際的なベストプラクティスの採用のバランスが、今後の成功の鍵となるでしょう。

6. 学びと課題 (23:20 – 37:09)

学びと課題としては以下のようなことが挙げられました:

適合性テストの重要性

  • 実装の一貫性を確保
  • セキュリティ要件の遵守を検証
  • システム間の相互運用性を保証
  • エコシステム全体の信頼性を向上
  • 開発効率と品質を改善

ユーザーエクスペリエンスの考慮事項

  • 使いやすさと安全性のバランス
  • 同意プロセスの透明性と簡便性
  • アプリ間のスムーズな遷移(例:app-to-app redirection)
  • ユーザー教育と啓発の重要性
  • 継続的なフィードバックと改善

規制当局の役割と市場力学

  • 規制主導vs市場主導アプローチのバランス
  • 標準化とイノベーションの促進
  • 消費者保護とデータセキュリティの確保
  • 公平な競争環境の創出
  • クロスボーダー取引の促進

実装に関するフィンテックの視点

  • 標準化された APIへのアクセスの重要性
  • 適合性テスト通過の課題と重要性
  • 銀行との協力と競争のバランス
  • 革新的なサービス開発の機会
  • 規制要件への適応と迅速な市場参入

これらの側面は相互に関連しており、オープンバンキングエコシステムの成功には、これらすべての要素のバランスの取れた考慮が不可欠です。適合性テストは技術的な基盤を提供し、ユーザーエクスペリエンスは採用を促進し、規制は公平性を確保し、フィンテックの視点はイノベーションを推進します。

7. オープンバンキングのユースケースとイノベーション (37:10 – 40:16)

ブラジルの支払いにおける進歩

  • 迅速なオープンバンキング実装(1年以内)
  • Pixシステムの導入:即時支払いの実現
  • デカップル支払いの導入:ワンクリックでの直接銀行支払い
  • 強力な規制支援と業界協力
  • 高度な技術標準(FAPI)の採用による安全性確保
  • フィンテックイノベーションの促進

エコシステムにおける仲介者の課題

  • 従来のデータアグリゲーターの役割の変化
  • API標準化による中間層の必要性の低下
  • 新たな付加価値サービスへの移行の必要性
  • データアクセスからデータ分析・活用へのシフト
  • セキュリティと信頼性の証明の重要性増大
  • 規制対応と技術革新の両立の必要性

従来の金融サービスプロバイダーへの影響

  • APIを通じたデータ共有の義務化
  • 新規参入者との競争激化
  • デジタル変革の加速
  • 顧客関係の再定義(オープンバンキングをチャンスととらえる動き)
  • 新たな収益モデルの模索(API as a Product)
  • セキュリティとコンプライアンスへの投資増大
  • フィンテックとの協業・パートナーシップの重要性

これらの側面は、オープンバンキングがもたらす金融サービス業界の大きな変革を示しています。ブラジルの事例は迅速な実装と革新の可能性を示し、仲介者は新たな役割を模索する必要があり、従来の金融機関は適応と革新を迫られています。全体として、これらの変化は、より開かれた、効率的で革新的な金融エコシステムの創出につながっています。

8. Q&Aセッション (40:17 – 52:46)

  • データ共有に関する銀行のインセンティブについての議論
  • 詐欺とマネーロンダリング対策の考慮事項
  • 国境を越えた銀行取引の課題と機会

データ共有に関する銀行のインセンティブ

  • 規制遵守:多くの場合、法的要件として実施
  • 顧客データの管理者としての役割認識
  • 新たな収益源の可能性:API as a Product
  • 顧客サービス向上とロイヤリティ強化
  • フィンテックとの協業による革新的サービスの提供
  • 市場シェア維持のための戦略的必要性

詐欺とマネーロンダリング対策の考慮事項

  • 新たな支払い手法による詐欺リスクの増加
  • 強力な顧客認証(SCA)の重要性
  • リアルタイムモニタリングと行動分析の必要性
  • eKYC(電子的本人確認)の活用
  • 銀行間データ共有による不正検知の向上
  • 規制当局との協力によるリスク管理フレームワークの構築

国境を越えた銀行取引の課題と機会

  • 異なる規制環境への対応の複雑さ
  • データローカライゼーション要件との調和
  • クロスボーダー支払いの効率化と低コスト化
  • グローバルな金融包摂の促進
  • 国際的な標準化(FAPI等)の重要性増大
  • マルチ通貨取引の簡素化
  • 国際的なオープンバンキングエコシステムの構築への期待

これらの側面は、オープンバンキングが単なるデータ共有を超えて、金融サービスの未来を形作る重要な要素であることを示しています。銀行には新たな機会と課題があり、セキュリティと規制遵守は依然として重要です。同時に、国境を越えた取引の改善は、グローバルな金融サービスの進化における重要な目標となっています。

9. 閉会の辞 (52:47 – 53:11)

  • 顧客体験と一貫したAPI実装に関する最終的な考察
  • 詳細情報についてのホワイトペーパーへの言及

このパネルでは、異なるグローバル市場におけるオープンバンキングの実装、課題、機会に関する幅広いトピックをカバーし、成功したオープンバンキングエコシステムにおける標準化、セキュリティ、ユーザーエクスペリエンスの重要性を強調しました。


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