北原白秋と山田耕筰は1922年に雑誌『詩と音楽』を創刊して詩と音楽の融合を図り、日本語の高低アクセントと日本人生来のリズム感を活かした近代化曲様式を確立しました12。
「この道」(1927)はこの中で生まれてきたもので、「ことばのアクセントをそのままメロディーに置き換え、さらに瑞々しい情感を映し出した傑作」3です。初出は『童謡百曲集』第3集。童謡といいますが、その求める歌唱上の表現力は高く、むしろ本格的な歌曲と言うべき曲でしょう。
この曲の作曲に先立つこと2年前の大正14年(1925年)3月8日、「治安維持法」が成立しました4。この法律になぞらえられ、権力が恣意的に捜査を行い、内心の自由が侵されるのではないかと恐れられている「改正組織犯罪処罰法」5の成立した日の夜、この曲を贈ります。
小川明子さん(メゾ・ソプラノ)の歌唱で、かみしめてお聴きください。
脚注
- 馬淵明彦『故郷・この道』NHK高校講座『音楽I』<http://www.nhk.or.jp/kokokoza/radio/r2_music/archive/3584_834.pdf>(2017-06-15取得)
- なお、その他参考になりそうな文献の一覧は、こちらにある。図書館のReferenceの使い方としても参考になる。
- 山田耕筰作品集「六騎/この道/あわて床屋」Craftone Edition <http://www.craftone.co.jp/yamada_k/KYS_011.html >(2017-06-15取得)
その後前奏の一部の和音に変更を施しているが、改変前のものが多く普及してしまっている。 - この時も、無理矢理に質問を終了させて審議が進行したようです。https://twitter.com/KO_SLANG/status/874922332346880000
- 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を改め「テロ等準備罪」を新設する法律。2017年6月15日7時45分ごろ、参院本会議で自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決、成立。委員会採決を省略するというウルトラCでの強行採決でした。【参考】日テレ24共謀罪「ウルトラC」強行採決 そのワケは<http://www.news24.jp/articles/2017/06/15/04364353.html>(2017-06-15取得)
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