夏井先生のプログ[1]に、いわゆる「プライバシーフリーク本」[2]の論評に形を借りた、日本の個人情報保護法制に関する論評が載っていた。激しく同意だ。
先生曰く
「個人情報保護法は行政規範だ」という当たり前の常識をもっと徹底して周知する必要がある
これ、法律家はさておき、一般には全く理解されていないんじゃないかと思うんですよね。なので、先日のOpenID BizDay[3]では、ここのところを大きく取り上げたのです。
基本に戻って不法行為法(Tort)の法解釈論として考えた方が妥当な結論を得られる場合が多い
(…[中略]…)
その際に最も参考になるのは,やはりプロッサーの類型論で,このような古典的理論構成のほうが実は有用性が高い。
技術的にも実は親和性が高いのも良い所です。こうした類型論は、そのまま「Objectives」と「Threat」に転換できるので、「Control」も設計しやすいのですよね。
しかし,個人情報保護法の適用によっては個人情報の本人の直接的な被害救済にはつながらない。そのような法律では
ないのだ。私見としては,欠陥が多いので,全面改正すべきだと思っている。
これは、多くの人が感じていながら言えていなかったことかも知れません。
「最近私もゼロクリアで書いてみたら?」ということはほうぼうで言っていますがが。
日本の法学者が本来やるべきことは,日本国の民法に規定されている不法行為法(特に723条)の解釈・運用でどうにかやれないかどうか可能な全てを努力を尽くすということだと思う。
これも本当にそのとおりだと思います。アメリカで話していると、まずそこから始まりますし。実効的なプライバシー保護はアメリカのほうがEUより効いているのではないかというのも、そこそこ聞きますよね。ただ、アメリカと違って日本はこの方面のいろいろな手段が整っていないようで、そのあたりを整えて行くというタスクもありそうです。
一方で、EUのデータ保護行政を使ったWTO抜け道問題に対する対処とかもあるので、実体的なプライバシー保護とは別に、貿易摩擦問題の外交的手段としての個人情報保護法というのももちろん有用なわけで、だったらそっちに舵を切らなきゃいけないわけですが、どうにも中途半端ですよね、今のままでは。
[1] 夏井高人: “鈴木正朝・高木浩光・山本一郎『ニッポンの個人情報 -「個人を特定する情報が個人情報である」と信じているすべての方へ』”, サイバー法ブログ, (2015/3/23), http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/03/post-bafd.html
[2] 鈴木正朝・高木浩光・山本一郎『ニッポンの個人情報 -「個人を特定する情報が個人情報である」と信じているすべての方へ』, 翔泳社 (2015/2/20)
[3] 崎村夏彦:『セミナー:企業にとっての実践的プライバシー保護~個人情報保護法は免罪符にはならない』, @_Nat Zone, (2015-03-01) http://www.sakimura.org/2015/03/2911/