ちまたには、OpenIDは2005年に Brad Fitzpatrick が作ったとされています。しかし、ちょっと調べると、それ以前に openid.net があったことがわかります。
OpenID.net が最初に登録されたのは2001年6月27日水曜日です。David Lehn氏によって登録されました。そして、アーカイブに残っている最初のサイトは、以下のような非常に簡単なページでした。
ご覧のように、このサイトからは3箇所にリンクされていました。
一つ目が、SourceFourge のOpenIDプロジェクトサイトです。David Lehn氏のプロジェクトです。これは、以下のようになっていました。
ここで、はっきりと OpenID が何者であるかが述べられています。
OpenID is a project to research and develop a system to share information associated with a particular user/group/account/etc between sites on the Internet.
OpenID は特定のユーザ/グループ/アカウント/他に関係する情報を、インターネット上のサイト間で共有するためのシステムを研究・開発するためのプロジェクトです。
2012年現在の OpenID Connect と、目的はほぼ変わっていないのに驚かされます。
このシステムをどのようにしてつくろうとしていたかというのは、当時の www.openid.net からリンクされていた2つのプロジェクトがヒントになるのではないかと思います。
一つ目が DotGNU です。これは、.NET Framework の GNU版ですから、開発環境ですね。
もう一つは XNSORG です。XNSOG は XDIORG の前進です。当時のサイトはこんな感じでした。
Welcome to XNSORG |
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The XNS Public Trust Organization manages XNS, a new XML-based open platform for automated data exchange with global identity, privacy, and permission management capabilities.
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XNSORG というのは、現在のXDIORG(私が副理事長をやっています)の前身です。2000年に設立され、eXtensible Name Service (XNS) という規格[1]を開発していました。この規格開発はその後、OASIS Open に持ち込まれて、eXtensible Resource Identifier (XRI) TC と XRI Data Exchange (XDI) TC になっています。
このXNSORGのページには、Bill Washburn (現在の XDIORGの会長)が 「President and Managing Director」として登場します。彼はその後、OpenID Foundation の初代 Executive Director になります。
一方同じ頃、もう一つの動きが現れていました。Nリバティ・アライアンスです。こちらは、当時マイクロソフトが推進していた「Passport」[2]というアイデンティティ規格に対抗する連合としてSun Microsystem などを中心にして 2001年9月に設立され、30社以上の企業を集めていました[3]。御存知の通り、ここは、OpenIDと並ぶ Identity Management 規格「SAML」を推進しました。リバティ・アライアンスはその後発展的に解消され、現在の Kantara Initiative [4] になっています。
Microsoft Passport, Liberty Alliance SAML, OpenID/XNS、どう考えても OpenIDが負け組にしか見えない、そんな中で、こうして Digital Identity 三国志時代が幕をあけたのでした。
(つづく)
[1] 私自身も、XNSには2000年から関わっています。
[2] Microsoft Passport は 1999年10月11日に発表されました。これは現在の Microsoft Live ID になっています。
[3] http://www.projectliberty.org/ 最盛期には150社以上になっていた。会費も高くて、リッチな団体でした。
[4] カンターラ・イニシアティブ。現在は技術規格ではなく、主にポリシー・規格の策定と製品認定を行なっています。カンターラはスワヒリ語で「橋」の意味で、乱立するアイデンティティ関連団体や規格の架け橋になってほしいとの希望からこの名前を私が提案しました。もう一つ候補に上がったのが、「Agora」でしたが、投票の結果、「Kantara Initiative」に決定しました。