小山の作品に最初に触れてから、もうかれこれ7年が経つ。その時は色々な作曲家の作品の流れの中で演奏され、現代性が強調されていたが、12月17日の彼の初めての個展で改めて聞き直してみると、実は大変リリシズムにあふれていることに驚かされた。今回の個展は主に独奏曲が取り扱われ、伴奏がついたのは中原中也の詩につけた歌だけであったが、あるいはこれが、その旋律性を際だたせたのかも知れない。
プログラムは、ピアノではじまって、クラリネット、ソプラノ、フルート、ユーフォニウムと続き、マリンバで締めた。いずれも比較的ハッキリとした旋律を持ち、調性もある程度持っている。中原中也の詩につけられた歌曲など、ほとんどロマンチックなほどであった。
作曲家の個展など、生涯にせいぜい3度か4度という小山だが、そんなに引っ込み思案になる必要はない。毎年でも、こうした形の演奏会を続けることが、やがて認知につながって行くであろう。
また、このような個展は、出演者から見ると必然的にガラコンサート的様相を示す。このような個展のシリーズとして、それぞれの出演者のリサイタルも会わせて企画しておいて、有機的にそれらを結びつけて行くことによって、相乗効果を狙うのも一考の価値があろう。
小山は「徒党を組むのはすきじゃない」というが、これは徒党を組んでいるのではなく、純粋にマーケティング的な話だ。このような有機的結合を持った演奏会を定期的に行って行かなければ、日本の聴衆の現代音楽アレルギーはなかなか直って行かないであろう。
そういう意味からも、ぜひ小山には頑張って欲しいところである。
(崎村 夏彦)
小山和彦 作品展
1996年12月17日
いずみホール
(東京:西国分寺)
ピアノのための即興 1989(改訂1992)
Piano 小山和彦「渓」独奏クラリネット in B のための 1996(初演)
Clarinet 山根孝司中原中也の詩による歌曲「心象」I II 1994
Soprano 鵜飼文子 Piano 小山和彦休憩
「飛翔」フルート独奏のための 1996
Flute 渡瀬英彦「佇みて」ユーフォニアム独奏のための 1995
Euphonium 深石 宗太郎マリンバのためのディベルティメント 1996(初演)
Marimba 岸田佳津子
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