皆さん、おはようございます。
MyData Japan 2025にご参加いただき、心から感謝申し上げます。
今日ここに集まってくださったのは、企業の方、行政関係者、技術者、研究者、そして市民の皆さま──立場も専門性も異なる方々ばかりです。しかし私たちは今、「データとのよりよい関係を、社会全体で築く」という、共通の目的のもとに集まりました。
MyDataの取り組みは、「理想」から「制度」へ、そして今、「実践」へと進もうとしています。本日は、その節目となる特別な日です。
MyDataは、一言で言えば──
「わたしの情報について、わたしが決められるようにする」こと。
これは、単なる個人情報保護の話ではありません。医療、教育、行政、日常生活のあらゆる場面に関わる、根源的な人間の尊厳と選択の問題です。
私たちは、次のような社会をめざしています:
情報の主導権が、組織から個人へと戻る社会。
「使われる」から「活かす」への転換。
同意・訂正・削除・再利用といった「ワンクリック権利」が日常的に行使できる社会。
MyDataの原則は、このビジョンを実現するための羅針盤です。そして今日ここに集まった皆さんは、この変革の担い手です
私たちは、自分に関する情報が、どのように使われているか、どこまで気づいているでしょうか?
スマホを開いた瞬間、交通系ICカードを使った瞬間、SNSで「いいね」を押した瞬間──
そのたびに、“わたしのデータ”は、どこかに蓄積され、分析され、誰かの意思決定に使われているかもしれません。
「“わたしらしさ”は、誰が決めるのか?」
「“選んだつもり”の同意は、本当に納得だったのか?」
この問いは、私たちに「自分の情報との向き合い方を見直そう」と促します。
MyDataは、「情報をどう守るか」だけでなく、「情報をどう活かすか」そして、「情報時代にどう生きるか」を問う、新しい社会の設計思想です。
本年のテーマは「MyData in Practice」──
「理念」を「設計」に、「設計」を「実装」に進めていく挑戦です。
2024年のテーマ「MyData by Design」では、BLTS──ビジネス、法律、技術、社会──それぞれの観点からの設計を深掘りしました。今年はそれを一歩前に進め、「現実世界でどう機能させるか」に挑戦します
本カンファレンスでは、
- DID/VCによる分散型IDの実装
- カメラ画像の利活用におけるガバナンスの設計
- 子どもを取り巻く情報環境とその保護
など、実際のプロジェクトを通じて「実践知」が共有されます。
多様なプレイヤーによる対話と連携によって、現場からの知見が集まり、新たな共通基盤となっていく。それこそが、MyData Japanの真価です。
最後に皆さんに問いかけたいと思います。
- あなたの組織では、個人が情報を活かせる仕組みが整っていますか?
- あなたの手がける技術は、人の尊厳と自由を支えていますか?
- あなた自身は、自分の情報について語れていますか?
MyDataは、誰かがやってくれるものではありません。
MyDataは、あなたの実践が形づくる社会そのものです。
今日この場での出会いや学びが、ひとつでも明日からの行動に繋がっていくことを願っています。そうした行動の積み重ねが、5年後、10年後の「わたしらしい社会」の礎になります。
それでは──
MyData Japan 2025、開会いたします。
ありがとうございました。