公正取引委員会において検討を進めていた、「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」が、6月12日、本会議で可決、成立ーイノベーション促進と消費者利益の拡大に期待

スマートフォンは、今や多くの人にとって生活に欠かせないツールとなっています。メールやSNS、ニュース、ショッピング、ゲームなど、様々な用途で利用されており、国民生活や経済活動の基盤となっています。

しかし、スマートフォンで利用される特定のソフトウェア、具体的にはOS(オペレーティングシステム)、ブラウザ、検索エンジン、アプリストアの提供は、グーグルやアップルなどの特定の有力事業者による寡占状態にあります。これにより、公正かつ自由な競争が妨げられ、イノベーションが阻害されている側面があります。

こうした状況を改善し、競争を促進するために、公正取引委員会において検討が進められてきた「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」が、6月12日の国会本会議で可決、成立しました1

公正取引委員会は、私が務めるデジタルスペシャルアドバイザーを含む専門家の知見を活用しながら、この法律の立案と施行に中心的な役割を果たしてきました。公正取引委員会は、市場における公正かつ自由な競争を促進することを目的とした行政機関であり、競争政策の観点から、デジタル市場の競争評価や、競争上の課題の特定とその対応に取り組んでいます。

この法律は、セキュリティやプライバシーの確保に配慮しつつ、特定ソフトウェアの提供に関する競争を促進することで、イノベーションを活性化し、消費者が多様なサービスを選択できる環境を整備することを目的としています。

法律の主なポイントは以下の通りです。

  1. 公正取引委員会が、特定ソフトウェアの提供等を行う事業者のうち、一定規模以上の事業者を「指定事業者」として指定する。
  2. 指定事業者に対し、以下のような禁止事項や遵守事項を定める。
    • 他の事業者がアプリストアを提供することの妨害禁止(ただし、セキュリティ等のために必要な措置で、他の方法では目的達成が困難な場合を除く)
    • 他の課金システムの利用を妨げることの禁止(ただし、正当な理由がある場合を除く)
    • デフォルト設定を簡易な操作で変更できるようにすること、ブラウザ等の選択画面を表示すること
    • 検索において、正当な理由なく自社のサービスを競争関係にある他社のサービスより優先的に扱うことの禁止
    • 取得したデータを競合サービスの提供のために使用することの禁止
    • アプリ事業者が、OSにより制御される機能を自社と同等の性能で利用することの妨害禁止(ただし、正当な理由がある場合を除く)
  3. 規制の遵守状況に関する報告や、関係事業者からの情報提供、関係省庁との連携、公正取引委員会の調査権限、違反是正のための命令、課徴金納付命令(算定率20%)などの措置を整備する。

この法律は、公布から1年6ヶ月以内に施行される予定です。

スマートフォン市場における競争促進により、OSやアプリストアの分野で新たな事業者の参入が期待されます。これにより、イノベーションが加速し、消費者はより多様で利便性の高いサービスを享受できるようになるでしょう。

ただし、セキュリティやプライバシーの確保は極めて重要な課題です。自由な競争の促進と、ユーザー保護のバランスを取ることが求められます。

新法の施行により、スマートフォン市場がどのように変化していくのか、消費者の利益につながっていくのか、引き続き注目していく必要があります。同時に、グローバルな視点から、各国の動向にも目を配る必要があるでしょう。

スマートフォンは、我々の生活に欠かせない存在となっており、その重要性は今後さらに高まっていくと考えられます。この新法が、日本のデジタル社会の発展と、消費者の利益拡大につながることを期待したいと思います。

脚注

  1. https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2024/jun/240612_digitaloffice.html

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