CIO三題

CIOという言葉はしばしば使われるが、必ずしも意味が一定しているわけでは無いようである。CIOにまつわる素朴な疑問3題、

  • CIOとはなにか?
  • CIOはすぐ首になるか?
  • CIO関連資料にはどんなものがあるか?

について、簡単にまとめてみた。


Q.1 CIOとは何か?

CIOとは、一般に、ある会社の情報技術とシステムに対する責任を持つ、シニア・エグゼキュティブのことであるとされてきた。実際、かつてのCIOは、情報システム部長の延長にあるものが多く、主に Technical なポストであった。しかし、近年ではその状況はかわりつつあり、Technology よりもInformation により重点がおかれるようになってきた。典型的には、その下にサブとして情報システム部長(VP of IT)などが置かれるケースが多いが、一部では、Chief Technical Officer (CTO) として、技術面を担当するエグゼクティブを置くことも見られるようになってきた。CIOはむしろ、ビジネスをより良く流すために、どのようなシステム投資を行なうべきであるかなど、ビジネスの本質に対する深い理解が求められるポストとなり、技術職ではなく、パワーユーザーあがりであることも珍しく無くなってきた。

社内の地位的には、CIOのレポーティングラインは、CEO, COO ないしは CFO であることが多く、取締役会に名を連ねることが多く、CTOよりは上に位置づけられることが少なくない。CEOがCTOから直接話を聞くということは比較的少なく、CIO経由で聞くという形になってきている企業もあるようである。そのような場合、CIOは、Chief Telecommunication Officer と Chief Technology Architect といった、技術者あがりの人間に、技術面ではサポートされることになる。そういう意味では、CIOの意味合いが変遷してきて、かつてのCIOは、現在のCTOとなっているとも言えるかもしれない。なお、CIOとCTOの役割の分担は、このモデルの他にも、「CIOは社内システム担当、CTOはテクノロジーのビジネス適用性の追求」などいろいろあり、決着がついている状況ではない。が、ガートナーのCIOの定義は、上記の雰囲気に近い。

ガートナーのCIOの定義

CIOのミッション

常に変わりつづける企業環境の中で、競合企業に対して優位な地位を保つために必要な、IT開発・インプリメンテーションイニシアチブにビジョンを与えリードすること。

レポーティング

シニアエグゼクティブ(CEO, COO ないしは CFO)にレポーティングする。ITポリシー自身と、IT戦略とビジネス戦略が同一線上にあることに責任を持つ、上級管理職である。典型的な肩書きは、”Vice President and Chief Information Officer.”

責任範囲

  • ビジネステクノロジーの企画:共同企画プロセスのスポンサーとなること
  • アプリケーション開発:エンタープライズレベルでの既存および新規のアプリケーション開発と、部門レベル開発の部門間の調整
  • IT基盤とアーキテクチャー(コンピュータ、ネットワークなど):新規設置および既存部分に対する投資が適切に行なわれるようにすること
  • リソース調達:「開発するか購入するか」、「アウトソースするかインハウスで提供するか」の意思決定
  • パートナーシップ:鍵となるITサプライヤーとの戦略的パートナーシップの確立
  • 技術移転:顧客とベンダーとが、自社とビジネスを行なうのがより簡単になり、かつ利益も得られるようなテクノロジーを提供して行くこと
  • 顧客満足:内部・外部のユーザーとコンタクトを取り、継続的に彼らが満足していることを保証すること。
  • トレーニング:既存および新規システムの有効活用が行われるよう、トレーニングを行なうこと

CIOに必要な資質

  • その企業のビジネスに対して深い理解をもっていること。
  • コストとリスクをマネージしつつ、ビジネスが必要としている機能をITを通じて提供できる能力があると立証するような経験を積んでいること。
  • 新しいテクノロジーのビジネスへの適用の可否の判断をすることに経験を積んでいること。
  • 社内の技術的でないユーザのニーズを理解し、彼らときちんと会話ができること。
  • 組織をマネージすることに長けており、中央のISリソースとアプリケーションを管理できると同時に、部門毎のリソースやイニシアチブの調整が行なえること。
  • 同時並行で複数のITプロジェクトのコンセプトを固め、プロジェクトをスタートし、期日までにカットオーバーする能力を持っていること。
  • 既存のマネジメントに溶け込み、よき聞き手であると同時に、ITビジョンの雄弁な推進者であること。

Q.2 CIOはすぐ首になるか?

米国におけるCIOの在任期間は非常に短く、2~3年であると一般的にいわれる。しかし、実際に96年に行われたサーベイによると、必ずしもそうではないことが分かる。CIO Magazine と Human Resource Magazine の共同サーベイによると、CIOの平均在任期間は6.8年となっている。もっとも、これは他の重役に比べて、最も短い期間なので、それが誇張されて2~3年との印象を生んでいるのかもしれない。

もちろん、実際に2~3年でやめるCIOもいる。しかし、それは他のポストでも同様であり、CIOが短期間で解任される率は、むしろ他のポストよりも低いようである。

 

Q.3 CIO関連資料(日本語)にはどんなものがあるか?

日経BP社の最近の雑誌に掲載された記事としては、以下のような物がある。

日経情報ストラテジー 1996年1/2月号 no.58

「チェンジ・オア・ダイ」に直面,日本企業は生みの苦しみを味わう 社長がCIOを宣言,業務改革急ぐ---174

日経情報ストラテジー 1996年9月号 no.54  

第1回 日本の情報化リーダー調査/CIOはいらない? イントラネット時代の情報化リーダー/求められる強力なリーダーシップと時代感覚---076

 

日経情報ストラテジー 1996年12月号 no.57

三菱商事 社長がCIOを宣言,業務改革急ぐ---230

 

日経コンピュータ 1997年6月23日号no.420

CIOへのアンケートで見えた日本企業の課題 メインフレームに依存,ネットワークや国際化を軽視---164

日経情報ストラテジー 1998年10月号 no.078

海外/米企業経営トップ意識調査 再び脚光浴びるCIO---148

 

日経ウォッチャー on IT Business 1998年10月2日号 no.061

「技術より経済効果を重要視」,権限拡大したCIOの攻め所は---45

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