平原綾香の最新のアルバム、my Classics にカッチーニのアヴェ・マリアが収録されている。このカッチーニ(Giulio Caccini, 1545-1618)は、フィレンツェのメディチ家に引き立てられたバロック時代の作曲家であるが、このアヴェ・マリアの作者としては疑問が残る。アルビノーニのアダージョ同様1、スタイルが全く当時のものとは異なるからだ。ちょっと聴いて見てほしい2。
これのどこがバロック????
ネオロマン派でしょう。ロシアっぽいな〜と思ってちょっと調べたら、ビンゴ。ソ連の作曲家・リュート奏者 Vladimir Fyodorovich Vavilov (1925-1973)によって1970年頃に作曲された曲で、彼自身によって1972年に出版およびMelodiyaレーベルに録音されています3。これがなぜか、彼の死後、Cassini作とされてしまったようです。完全に、著作者人格権の侵害になりますな。そもそも、Vavilovの子孫には著作権料は支払われているんだろうか…。なお、Vavilov氏は他にも有名な曲がたくさんあるようですので、それらは別途紹介したいと思います。ちなみに、同氏は膵臓がんで貧困のうちに亡くなりました。
さて、このカッチーニ、もといヴァヴィロフのアヴェ・マリアととX Japanの紅の関係ですが…。
まず、譜例1を見てください。
(譜例1)X Japan 紅のサビ
あの有名な、私も大好きな旋律です。
次に、譜例2を見てみてください。
(譜例2)Vavilov の Ave Maria のテーマ
はい。完全に一緒に破綻なく演奏できますね…。
紅のサビのところって、Vavilovのアヴェ・マリアの編曲だったんですね…。
ヴィヴァロフのアヴェ・マリア聞く
往く秋の夜更けに響くアヴェ・マリア、アヴェ・マリア
脚注
- アルビノーニのアダージョ、いや、ジャゾットのアダージョと呼ぶべきかは、Remo Giazotto による1958年の作品。これも、全然バロックじゃない。ネオロマン派だ。これをバロックの名曲とか書いてる音楽評論家って…。
- Sumi Jo、うまいな。
- 出典:http://en.wikipedia.org/wiki/Ave_Maria_(Giulio_Caccini)
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