Evelyn Glennie Recital @Tokyo Opera City

実は、お恥ずかしながら、Evelyn Glennie の演奏を生で聴いたのは、今回がはじめてであった。それまでは、イギリスのPromsのTV中継やCDくらいでの印象しかなかったので、まあ、そんなもんだ位に思っていた。むしろ、私の娘が耳が不自由なので、耳が聞こえないということに関する彼女のエッセイのほうに感銘を受けたりしていたくらいだ。

こうした録音からの彼女の演奏の印象は、それほど緻密という感じはなかった。音に関してもそれほど神経を配っている印象はなかったのだが、今回の演奏会で、その印象は完全に覆った。ステージにはだしで立つ彼女の、非常にこまやかかつダイナミックな、色彩豊かな演奏は、録音で聞いていたのとは、まったく別物であった。はだしであるというのは、彼女の耳が不自由であることに関連しているのかもしれないが(ステージの振動を足で聞いているのか?)、いったんあれを見てしまうと、普通の人が、靴を履いてステージに立って、かかとの音をさせているのが、かえって音に対して無神経であるように思えるようになってしまった。

演奏自体は、非常に密度の高いものだった。久方ぶりに、まともな演奏会に出会えた感じである。さすがは一流ということか。プログラムも、ほとんど現代曲でありながら、聴衆を厭きさせないものでさすがと言えよう。私の趣味かもしれないが、特に Zivkovich の Ilijas や、Heath の Darkness to Light などの演奏が気に入った。アンコールで弾いた Rosauro のマリンバ協奏曲の第1楽章も、CDより遥かにダイナミックで、見違えるようだった。

がっかりしたのは、聴衆のレベルだ。武満記念大ホールがほとんど満員というのには、招待客や、テレビで見て、「耳が聞こえない演奏家」見たさのミーハーな客も結構いたのではないだろうか。私は、6000円のS席に座っていたが、私のひとつ前の客は、コンサートのはじめから終わりまで舟を漕いでいた。(休憩時間中は起きていたが。)あれだけエクサイティングな演奏で寝れるというのは、さぞかしお疲れだったのだろう。

コンサートのあとのサイン会は200名ほどが、長蛇の列を成した。私も、その日発売になった「Her Greatest Hits」を買って、ミーハーにもサインしてもらった。CDの中では、DISC2の Light in Darknes の録音が、当日の音に近い感じであった。

また、今度彼女が来たら、ぜひ演奏会に行こうと思う。それと同時に、若きマリンビスト達にも、ぜひ彼女の演奏を見て、いろいろと吸収してもらいたいものである。

1999-09-12
(崎村 夏彦)

Evelyn Glennie Recital: Programme A

日時:1999年7月3日(土)6時
場所:東京オペラシティ
コンサートホール(タケミツメモリアル)

Evelyn Glennie, Marimba, Percussion
Fluctus(1988) /Nebjosa Zivkovic
Drum Dance /John Psathas
The Golden Age of the Xylophone / Unknown (arr.Glennie)
Darkness to Light (Asian premiere) / Dave Heath
休憩
Frum /Askell Masson
Valse Brillante / George Hamilton-Green
The Castle of the Mad King / Nebjosa Zivkovic
Ilijas / Nojosa Zivkovic
The Cheese & The Worms (Asian premiere)/ Stewart Wallace

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